「反人種差別運動」を支持する声明
去る5月25日に米国ミネアポリス近郊で起きたジョージ・フロイド氏の殺害事件をきっかけに、警察による黒人の暴行死が後を絶たない状況に対し、アメリカをはじめ、世界各地で激しい憤りが表明されています。フロイド氏の死は、公正と改革を求める反人種差別デモの大きなうねりを生み、その抗議行動は今なお広がり続けています。私たち異文化コミュニケーション学会運営委員一同は、世界各地のデモに参加した人々の力強い訴えに深く共鳴し、この運動に連帯すると共に、日本と世界における人種差別と不公正への反対を表明します。
地球市民であるということは、自分たちが住む地域や場所の違いを超えて、差別の問題が個人、制度、文化のレベルで複雑に交差し、連動していることを理解することでもあります。今回の一連の抗議行動は、海外で発生したとはいえ、日本に暮らす私たちとは無縁ではありません。日本でも様々な差別が行われています。この機会に私たちは自らと向き合い、日本社会の文脈において、自分の問題として差別を再考する必要があると感じます。私たちは、自分たちを「善良」な市民と位置付けておきながらも、自分たちと異なった他者に対して、その「違い」を必ずしも尊重してこなかったのではないでしょうか。人権侵害を目にしたとき、声を上げることなく、現状維持に加担してきたのではないでしょうか。今こそ、自問しなくてはならない時です。
異文化コミュニケーション学会は長年にわたり、多様性(ダイバーシティ)と包摂(インクルージョン)を促進するための研究および教育活動に力を入れてまいりました。その努力はまだ不十分であることを認識し、差別問題が現在も進行形であると認めなければなりません。私たちは団体として、不公正を認識するだけでなく、声を上げて行動するために必要な理論や教育ツールを提供しつづけなくてはなりません。より公正で公平な世界に向けて、多様性を受け入れた多文化社会をつくるために、私たちはこれからも歩み続ける所存です。
2020年8月7日
異文化コミュニケーション学会
会長 出口真紀子
運営委員一同